2013年3月 第12号

2013年10月23日 水曜日

巻頭言(第12号 2013年3月)

神奈川県小児保健協会
会 長   後藤 彰子
 



〜発達障害児の対応4年目を迎えて〜

少子化をはじめ、子育てを取り巻く環境は決して明るくない。小児保健学会、小児科医会が小児保健法の制定、予防注射の無料化のチラシや署名活動を開始した。少しでも行政を動かす原動力になればと願っている。
 神奈川小児保健協会は発達障害に取り組んで4年目となる。 榊原洋一先生の3回の講演をもとに、現場でのパイロット事業を開始し、2年目となる。 
地域での研修会は、相模原が担当し、やはり発達障害が取り上げられた。
指導者研修会は、3年間の取り組みの成果としてシンポジウム形式とした。入場者を断る程の盛況であった。発達障害に関わる多職種からの発表があった。臨床心理士の 上原芳枝氏の司会と講演から彼女は就学に向けた縦の連携の大切さを強調した。「三歳から四年生まで」の一貫支援である。そして他児との違いで選別するのでなく、特性に合った普通の子育て支援になって欲しいという。この事業はさらに2〜3年継続して行政に提言としてまとめたいと思う。
 第320回小児科学会神奈川地方会で、当協会が「周産期からの虐待予防」という主題でシンポジウムを主催した。この道に造詣の深い高知の澤田先生に特別講演をお願いした。
 最後に当協会の事務局長として永年ご尽力いただいた、神奈川県立こども医療センター母子保健局長の赤城邦彦先生が3月で退職される。当協会の活動には何時も真摯に向き合って頂き頼りにさせて頂いた。ほんとうにありがとうございました。

投稿者 神奈川県小児保健協会 | 記事URL

2013年10月21日 月曜日

事務局長から

神奈川県小児保健協会
事務局長 赤城 邦彦


 神奈川県小児保健協会は1954年設立時、小児科学会地方会の小児保健神奈川支部として小児科医のみの会員であったが、1963年からは現名称に改称して会員を医師のみに限定せずに小児保健に携わる医師以外の職種にも広く参加を求めて、現在に至っている。1971年からは神奈川県立こども医療センターが事務局となっていて、2004年には小児保健協会50周年を迎え、50周年記念誌を発行した。
 協会が取り組む医療と保健にかかわる課題は、時代とともに変化する。数年前まではトピックス的に話題を取り上げていたが、後藤彰子会長の「初心に帰って新生する」を合言葉に「あり方検討委員会」が開催され、一つのテーマを少なくとも3年間は続けること、本協会は医師、看護師、保健師、保育士、行政等の多職種が参加しておりその利点を大いに活用すべきこと、さらに行政への提言のような形でまとめることが望ましい、ということになった。
 発達障害のテーマで開催してから今年で4年目であるが、榊原洋一先生、上原芳枝氏というこの道の第一人者でかつ現場に大変精通しておられる方々の指導のもとで、始めは不案内であった私たちや、保育士さんほか、会に参加された方々も次第に実質をともなった内容として理解できるようになってきていると思われる。今年のシンポジウムにみられたように、発達障害への対策は、園での個々の対応から、地域での巡回診療や療育センターの役割、5歳児健診等、様々な取り組みが語られたが、これらが重なり合って初めてより有効な対策になると考えられる。中でもパイロットスタディとして行われている園での個々の児童に対する保育士さんの対応については、まず私たち大人の一人ひとりがこども達とどう接するかという非常に大切で貴重なものを含んでおり、今後の発展に期待したい。次年度には学校を含めた教育関係者の方の出席も望まれる。
 今後とも皆様方のご意見やご声援により、こども達の笑顔を願っています。

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2013年10月20日 日曜日

安心して生み育てられる神奈川をめざして

神奈川県健康増進課長 仲谷政二郎

平成9年4月に母子保健法が改正され、乳幼児健診や新生児訪問など、住民に身近な母子保健サービスの主体が市町村となりました。
また、この4月からは、未熟児訪問事業についても、市町村に移譲されることとなり、住民に身近なサービスはほとんどすべて、県の手を離れることとなったところです。
今年度は、市町村の職員の方を主な対象として、未熟児訪問に必要な知識やスキルを身につけてもらうことを目的とした研修などに取り組んできたところですが、この未熟児訪問事業は、50年以上にわたり県保健福祉事務所で実施してきたものであり、円滑な移管となることを切に望むところです。
県の母子保健事業は、今後、住民の方に接する場面がますます少なくなる中で、広域的・専門的な立場での市町村支援を中心に展開していくこととなります。
また、平成24年7月には、「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」が改正され、県保健福祉事務所には、地域保健サービスの提供における、市町村や関係機関と連携した「重層的支援」の役割が求められているところです。
 一方、現在の保健福祉事務所における業務は、母子保健、精神、難病など分担制が進み、市町村との関係においては希薄化が進んでいるという状況があることから、母子保健業務をはじめ、今後、県が地域保健において求められる役割を果たしていくためには、これまで以上に市町村との連携を深め、地域における包括的な保健・医療・福祉サービスの提供に努めていく必要があります。
今年1月の知事年頭記者会見では、「神奈川全開!宣言2013」と題する3つの宣言を行いました。その中で「いのち全開宣言」として、来年度から、新たに地域からの健康づくりなどに取り組み、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である、「健康寿命」で日本一をめざすこととしております。
この取組みの特徴としては、保健師活動に焦点をあて、保健師パワーフル活用による健康づくり事業が柱の一つとなっているところですが、まず、来年度は、モデルとなる市町村に県の保健師を派遣し、市町村の保健師と一体となって新たな健康づくり事業を開始します。
こうした取組みを通して、県と市町村が連携し地域保健サービスを提供していくことにより、安心して生み、育てることができる環境の実現、さらには本県のめざす「20年後もいのち輝くマグネット神奈川」につながっていくものと考えます。

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2013年10月19日 土曜日

事業報告

~平成24年度 神奈川県小児保健協会の活動状況~


平成24年5月22日(火)  理事会     
   場 所:神奈川県総合医療会館 2A会議室
  
平成24年10月22日(月) 地域母子保健指導者研修会 
   場 所:相模原南メディカルセンター 2階大会議室
   内 容:講演「気になる子への関係機関の支援について」
   講 師:ワンダートンネル橋本発達相談センター所長 千谷 史子氏 
   参加数:83人

平成24年11月16日(金) 母子保健指導者研修会
   場 所:日本丸訓練センター 第1・2教室
   内 容:シンポジウム  発達障害のこどもたちの成長を促すために
        「就学前の支援」 ~いま私たちができること、これから求められること~
   座 長:リソースセンターone 臨床発達心理士          上原 芳枝 氏
   シンポジスト:みどりの家診療所院長                    三宅 捷太 氏 
            横浜市東部地域療育センター地域支援課長       大野  伸之 氏
            藤沢市立藤沢保育園長                         瀬戸富美江  氏
            小田原市障がい福祉課専門監                内田 暁子  氏 
            川崎市こども家庭課長                  堀田 彰恵 氏
              リソースセンターone臨床発達心理士         上原 芳枝  氏
        参加数:151人
                                    
平成25年1月22日(火) 神奈川県小児保健協会のあり方検討会
           
平成25年3月       神奈川県小児保健協会だより(第12号)発行
    
  パイロット事業  協力機関:藤沢市立藤沢保育園(次年度に継続実施予定)

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2013年10月18日 金曜日

平成24年度 神奈川県母子保健指導者研修会

平成24年度 神奈川県母子保健指導者研修会
シンポジウム 発達障害のこどもたちの成長を促すために
「就学前の支援」
~いま私たちができること、これから求められること~

座  長         リソースセンターone 臨床発達心理士    上原 芳枝  
シンポジスト
◇小児科医から:みどりの家診療所院長  (医師)                      三宅 捷太
◇療育から:横浜市東部地域療育センター地域支援課長(ソーシャルワーカー)   大野  伸之
◇保育現場から:藤沢市立藤沢保育園長  (保育士)                       瀬戸 富美江
◇行政(福祉)から:小田原市障がい福祉課専門監  (保健師)              内田 暁子
◇行政(保健)から:川崎市市民・こども局こども本部 こども家庭課長  (保健師)  堀田 彰恵
◇園・小学校一貫の発達支援アドバイザーの立場から:
           リソースセンターone(臨床発達心理士)                上原 芳枝

 
-シンポジスト発言要旨 -

小児科医から
■重症心身障害児者多機能支援施設 みどりの家診療所院長
 三宅 捷太 氏


私は障害児医療を中心に教育・福祉・保健と深くかかわってきた小児科医です。臨床医が発達障害のある子どもと家族にいかに接し診療しているかを改めて考えました。まずは地域のかかりつけ医として一般診療をはじめとして予防接種・乳幼児健診・学校健診を通して健康支援をしています。その際の配慮として①診察室は整理に努め不要なものはおかずに単色系の壁・カーテンとする。②診察や注射などの順序の絵カードを作成し言葉と共に説明する。③本人のつらさ、親の困り感に共感し、問題の指摘だけをするのでなく、診断をきちんと言った後で、母親の上手な関わりのアドバイスをする。④睡眠・排泄・良質の水分摂取・自然との接点・親とのスキンシップなど、どの子どもにも共通の「良いとこみつけ」と「ほめて育てる」の子育て支援にまず努める。⑤夫婦仲良く、前向きな家族の姿勢と、治してからではなく発達障害と共にある生活をめざす。広い公園で一緒に走り遊びまわるなどと、子どものすることを親が模倣すると拘り行動が溶けて相互模倣の関係ができる。⑥同じ思いの親同士の交流が光となるので親の会を紹介し、子どもにじっくり向き合える状況を作る。⑦薬剤の利用はこれらを円滑にするためであることを相互に確認して使う。以上、診療所医は毎年変わる保育士・教師に対して、引っ越しがなければ継続して子どもの健康支援と親の子育て相談に乗れる点で存在意義は高く、よい連携対象でありうると考えます。

療育から
■横浜市東部地域療育センター地域支援課長(ソーシャルワーカー)
 大野  伸之 氏


横浜市の各地域療育センターでは、発達に不安を訴えて来所される方の相談をしています。その申し込み数は増加し続けており、各センターで様々な取り組みが実施されています。当センターでの3つの柱として、ソーシャルワーカーの受付から各相談、診療体制および外来での指導内容、早期療育グループ、児童発達支援事業、通園療育における集団療育の取り組みを報告しました。地域での活動の報告では、幼稚園・保育所、小学校等の連携活動として巡回訪問、研修会等を紹介しました。また、幼稚園・保育所で実際に取り組まれている配慮が必要な子どもたちへの取り組みについて写真を通じて紹介しました。近年の幼稚園・保育所での傾向として配慮が必要な子どもの増加は明確であり、各園では「どの子にも過ごしやすい環境」を主点に保育を考えています。療育センターとしてその一助となるよう連携を強化しています。


保育現場から
■藤沢市立藤沢保育園長(保育士)  
  瀬戸 富美江 氏


「神奈川県小児保健協会パイロット事業を実施して」
パイロット事業の実践として、2012年3月発行の協会便りはアドバイスのほんの一例ですが、上原先生の具体的なアドバイスを基に保育を実施いたしました。特に保護者にアドバイスを伝えたことで、「何故こうなるのかと思っていたことが理解できました」と話され、保護者がこどもの状態を理解して関わる姿が見られました。保育士と保護者が共通の認識を持つことができたことは、より良い支援につながったと実感いたしました。

 
行政(福祉)から
■小田原市障がい福祉課専門監(保健師)   内田 暁子 氏


「保育園等巡回相談を実施して」 
公立保育園での発達障害や気になる子が増加する中で、平成22年度より保育士の支援として早期発達支援モデル事業がスタートした。将来の子どもたちの発達支援を視野に入れながら、療育機関の保育士、保健師、臨床心理士がチームを組み実施した。園では、発達障害児の観察をしながら、集団生活でのアドバイスを行っている。保育士へのカンファレンスを通し具体的な解決策を提案していく。また、必要であれば他機関の連携もスムーズにいくようコーディネーター役も行う。年長児については就学相談へ上手くつながるように、3歳までは健診との連携を促し、療育が必要な児は療育機関との連携ができるよう支援してきた。また、親の希望により個別相談と園の巡回相談との連携も始まっている。今年度は、幼稚園や民間保育園へも拡大してきた。
多職種がチームでアプローチすることで、お互いの専門性を理解し発揮しながら、他機関の連携や、よい支援につながってきている。


行政(保健)から
■川崎市市民・こども局こども本部こども家庭課長(保健師)               堀田 彰恵 氏

「川崎市5歳児健康診査事業について」
川崎市では、5歳児健診を昭和60年から実施していますが、平成20年度に問診項目等の見直し検討を行いました。その主な内容は、
●受診票等帳票類の改訂(発達障害の気づきと支援の機能を強化するため問診項目、指導項目等の見直し) 
●啓発リーフレットを作成し健診の案内に同封して送付 
●健診実施医療機関、保育園・幼稚園等関係機関との連携強化  の3点です。
その後、受診率が平成20年度の72.8%から,平成22年度73.4%,平成23年度75.8%と向上しました。また、医師の指導項目に新設された「園の先生への相談勧奨」の助言に従って、保護者が保育士や幼稚園教諭に相談し専門相談機関につながった等の事例も数件認められています。今後も、引き続き発達障害の気づきと支援に向けて、健診後のフォロー機能の強化や関係機関との更なる連携強化等に取組んでいきたいと考えています。


園・小学校一貫の発達支援アドバイザーの立場から
■リソースセンターone(臨床発達心理士)               上原 芳枝  氏

発達障害児・気になる子は、部分的に2~4年程遅れて発達し知的な遅れはないため、子どもに合った育て方により、4年生位までには個性の範疇となる子も多い。従って、「就学までに」と区切る発想をやめ、4年生位までのスパンで他児と同じような言動にゆるやかに"軟着陸させる"視点とプランが必須である。
ある園と小学校を一貫して担当している発達支援アドバイザーとして、子どもを伸ばすた
めに最も重要な "縦の連携" 引き継ぎシステムを紹介しました。
【*上原先生にはシンポジストとしても、ご発言いただきました。】

 

-シンポジウムから見えたもの-
上原 芳枝 氏

「発達障害」という言葉が浸透しつつある昨今ですが、保護者の方や先生方の日々の戸惑いを裏付けるかのように、この日の会場は溢れかえっていました。"発達障害のこどもたちの成長を促すために「就学前の支援」~いま私たちができること、これから求められること~"というテーマでシンポジウムが実施され、医療、療育、行政(巡回相談・5歳児健診)、保育現場から神奈川県内の最前線で活躍されている方々の報告と、東京を中心に活動する私から園と学校の連携の報告、質疑応答で展開されました。座長を仰せつかり、せっかく県下の最前線の方々が一堂に会するのだから、各報告で終わるのではなく「連携」に焦点を絞って進行したいと考えました。
発達障害か否かの線引きは曖昧で、知的障害はないが発達の偏りが顕著で目立つ行動をする子から軽微な子まで状態は様々であるため、まず園で特性に合った対応することが重要ですが、現場の苦境も報告されました。園への支援として療育機関の担当者が園に訪問するだけでなく、対応について園からの確認の電話が入るという報告もありました。巡回相談では専門機関に"つなぐ"ことよりも、まず、より具体的な対応策が園の先生方に提供されることを期待したいと感じました。
人間の骨格でいえば"背骨"に当たる『縦の連携』は最も重要です。気になる子は、部分的に2~4年程遅れて発達するため、「就学までに」と区切る発想を変え、4年生位までのスパンで他児と同じような言動にゆるやかに"軟着陸させる"支援プランが必須となります。私からは、3歳から4年生までの一貫した支援体制で、保護者はわが子が特別支援児であることを知らずに、ほとんどの子どもは4年生までには支援から外れていくことを報告しました。
『横の連携』は園と医療・療育機関の連携です。医療現場からは、園の先生方からの情報提供を積極的に求める旨のお話しがありました。ドクターが保護者と園の緩衝材となることで、よりよい支援も期待できます。これには園、医療機関がオーバーワークにならない書式やシステムが求められるでしょう。
5歳児健診では、保護者の気付きを起点に医療や療育へ"つなげぐ"ことが主な目的とのことでした。「個人情報」の壁が立ちはだかり、主たる支援の場である園や学校に健診の情報提供が難しいことも浮き彫りとなりました。
これから成長する幼児期に、保護者がわが子と他児の違いを"認める"選別の負担からスタートしない支援であってほしい。特性に合った支援は、特別でない当たり前の子育て支援となってほしい。本人が、保護者が、先生が必要以上に苦しまないために、~いま私たちができること、これから求められること~を具現化するには、行政の枠組みの構築はもちろん、必要に応じて現場同士が無理なく有機的に連携して成果をあげ、実証されたモデルとして広く提示することが、実は近道だろうと再認識できたシンポジウムでした。

投稿者 神奈川県小児保健協会 | 記事URL